「帰国したら就職しよう」

今となれば笑い話ですが、実際にそう思ったことが何度かありました。
スリランカの工場が野良ゾウに襲われたり、デング熱にかかり何日も寝込んだり、現地の人にも日本人にも何度も騙されたりもしましたが、今ではカフェなどの弊社関連施設ではもちろん、全国の書店や観光地、セレクトショップなどで、僕らのプロデュースした商品が販売されています。

最初に工場を作ったスリランカは、渡航延期勧告が出るような国でしたが、人が寄り付かない内戦国だったからこそ、逆にチャンスも多かったように思いますし、外国人が滅多に来ないため、僕はどこに行っても特別扱いでした。
現地で記者会見をすれば多くの記者が来てくれましたし、大臣や有名歌手なども協力依頼に快く応じてくれました。
困難なこともありましたが、何よりビジネスモデルに自信を持っていたので続けることができました。

ぞうさんペーパー開発当初は輸出入ができず、商品の輸入を止められて収入が途切れて家族に辛抱してもらう時期があったりしました。
実は、ワシントン条約で象の派生物はすべてにおいて輸入不可能だというルールがあり、当時の担当通関士を通して経済産業省から通達があったからです。
約1年の交渉の末、本部ジュネーブからの特別措置を受けて販売しています。
ほかにも、テロで出荷用の荷物が爆破されて納期が遅れてしまった経験もあります。

それでも冒険のようなスリル、喜んでくれる人達の笑顔、そして事業が成長すればするほど自然や動物や人が幸せになるビジネスモデルに助けられています。

素晴らしいアイデア、誰もした事がない痛快なビジネスモデルは執念を支えてくれます。
危険がいっぱいの冒険のようなビジネスでも、のちに人生を豊かにしてくれます。

スリランカのケゴールという町にある「ぞうさんペーパー」製造工場には、現在100人以上のスリランカ人スタッフ達が働いています。彼らは以前のように、ジャングルの木を切り倒さなくてはならないような仕事や、ゾウを嫌って避けたり傷つけたりなどはしません。なぜなら、彼らにとってゾウは大事なビジネスパートナーだからです。
今ではゾウがより住みやすい環境づくりを進めるべく、私達スタッフや地元の人達は植林活動やゴミの分別活動など、環境保全に力を入れています。
　かつて、人間と野生動物がテリトリーを奪い合い、傷つけあっていましたが、今では、少なくとも私達の工場の近隣では、ゾウと人間が協力しあって商品を製造しています。ゾウはウンチを人間に提供し、人間はゾウのすみやすいジャングルを維持するため、植林などの環境保全の努力をします。そしてゾウは安心して暮らせるようになり、民家などへ出て行く必要がなくなります。
　このように、ゾウと人間が協力し合い、商品を製造して海外に輸出することで、外貨を獲得し、そして雇用のチャンスもできるという流れが生み出されるのです。さらに利益の一部はゾウや自然の保護のために使われ、人、モノ、そしてお金がうまく循環する、いわば、「ぞうさんペーパー」とは人間と野生動物の共生を可能にする画期的なビジネスモデルなのです。

2011年、安全保障の確保を目的に、東京から北広島町の芸北に本社を移転したことをきっかけに「芸北ぞうさんカフェ」という、自家焙煎珈琲豆のドリップ珈琲や手作りピザなどを出すカフェ＆ライヴハウスをオープンしました。
芸北は美しい自然に恵まれながらも過疎化が進む田舎町です。一番近いコンビニでも25キロ以上先にあるような町です。
ここ芸北で僕らは、米や野菜、椎茸などを生産しています。肉は地元で獲れた猪や鹿を自ら解体して食肉を確保し、魚は近くの浜田港に「第一ぞうさん丸」という船名の漁船を所有しておりますので、新鮮な海産物をカフェでご提供できます。自社里山から薪を確保し、自然エネルギーを自給し、薪ストーブやロケットストーブで店内の空調に利用しています。水も山の湧き水を使用するなど、ほぼ自給自足のカフェ運営をしています。そんな環境での事業展開を進めながらも、毎月、東銀座にある東京事務所にも行き来していると、田舎の素晴らしさ、都会の素晴らしさを客観的に感じる事ができます。

都会暮らしが嫌いになったわけではありませんが、いざという時の安全保障を確保できる田舎をベースにしながら、国内外で事業展開する形を目指すようになりました。その理由は、阪神大震災や東日本大震災を経験して、いざという時に家族や社員をまもる事ぐらいできないのはあまりにも他力本願的ではないかと思ったからです。サバイバル意識を常に持ちながらビジネスを成長させる事を目指しています。東京での経営は、売り上げの多くが家賃など様々な固定費に消えて行きます。田舎での経営はそれらの経費のほとんどがかからず、その分を夢のあるチャレンジに費やす事ができます。

地域活性化に少しでも寄与する事が出来る事も経営者としての喜びです。雇用を生み出して少しでも過疎化が進む地域に貢献したいと思っています。

知り合いもいなかった土地での起業は、私にとって新たな冒険でしたが、東京で出来なかった多くの事をここで実践しています。農業や狩猟による自給自足、山から薪を調達しての薪ストーブやピザ作りなど、都会からカフェに来てくれるお客様に喜んで頂けます。

100年前からあって、今もあり、そして100年後もある。
そんな時空を超えた商品開発を目指しています。

INDY GOODS とは、映画「Indiana Jones」シリーズの冒険野郎ジョーンズ博士をモチーフに Michi Corporation がプロデュースするアドベンチャーブランドです。
いつなんどき馬に飛び乗り全力疾走で敵を追いかけなくてはならない時も、そして馬からトラックに飛び移り、アークを奪い返すために急遽泳いで潜水艦に向かわなくてはならない状況にでも、自然に対応できる「両手ブラリ」のスタイリングが基本です。

そして私達は気づいてしまった。
「癒し」や「安らぎ」よりも素晴らしいものを…
それはリスクをとり、謎をときながら前に進んでいく..
冒険と知性は男のロマンである。

火の中を脱出するためには、アクリルなどの化学繊維を身につけず、常にレザーやコットン、リネンやウールなど何百年も前から存在した素材が必要です。
そのために私達は伝統的な製法、ハンドメイドを主流としたものづくりを展開します。
それはまるで発掘作業、考古学のようなものづくりです。いい材料がある地域に行き、そこでその土地の職人と一緒に製作します。